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クリーニング経営コラム

アメリカ大手スーパーの日本撤退

世界最大のスーパーであるアメリカのウォルマートが日本撤退を決めました。クリーニング業界では外国の大手クリーニング店が日本で経営するということは考えることはできませんが、参考になりますのでこの問題を考えてみます。

ウォルマートは16年前日本に進出して、声優を完全子会社化したのが10年前です。そして今回撤退を決めました。なぜこうなったのか、その理由として挙げることができるのは次のとおりです。

1.価格戦略の違い

ウォルマートは「毎日が安く」(Everyday Low Price 略してEDLPという)が価格戦略です。一年中同じ価格で安く売るということです。これに対して日本のスーパーの多くは、通常価格を特売日を設けて安く売る(High-Low Price 略してHILOという)価格戦略をとります。年中安くするというのではなく、価格にメリハリをつけて売ります。

クリーニング業ではこれに似ているのが量販店と専門店の違いです。価格を安くして点数を多く集める量販店と、価格を通常に置き特売日を設けて安く売り、品質に重きを置く専門店の違いです、しかし、この両者は本質的に違うと思います。

日本の消費者は結果として、日本のスーパーの多くがとるHILOに軍配をあげました。ウォルマートとしては意外だったと思います。

2.販促の違い

販促についてはっきり違いが出ます。具体的にはチラシの取り扱いです。販促費用の中でチラシは非常に大きく、スーパーの中にはチラシが販促費用の大部分を占めることもあります。

ウォルマートは一年中同じ価格で安く売るのですから、チラシは重要とは言えません。むしろ節約ができることが強みです。対抗する日本のスーパーはチラシ中心です。

この両者に対して、お客様の下した判断はチラシ中心の日本のスーパーの圧勝でした。ウォルマートはアメリカと違い、日本での事業の難しさを実感したと思います。

クリーニング業はどちらかというとダイレクトメール(DM)中心です。チラシは以前に比べると少なくなりました。しかし現在もチラシ中心でしっかり新聞に織り込んでいるクリーニング店は成長しています。ここは日本のスーパーのチラシ戦術が参考になります。

3.特長が出せなかった

EDLPすなわち毎日を安くを売りにしているのですが、競合店の方が単品でみると安かったりします。販促がすばらしいかと言いますと、販促は節約するものという考え方ですので、もっと積極的に販促をしたらと思うこともあります。このような状態ですので、これといった特長を出せなかったように感じます。

クリーニング店の場合、お客様が来店する大きな理由のひとつに、お店が近いからということがあります。スーパーの商圏は広いので、このようにお店が近いからという理由だけではお客様が多く来るとはかぎりません。

またクリーニング店は、品質で勝負するなど他に特長を出す方法はありますが、スーパーは立地、大きさなどで大方決まってしまうこともあって、名前だけでは売れません。

以上の理由をあげましたが、ウォルマートのアメリカでの売上は約55兆円(5千億ドル)と、日本のイオングループの約8.4兆円を大きく上回る会社です。最近の業績はこの10年にない好調です。

一方、日本の子会社の西友の売上高は約7千億円で、アメリカのウォルマートの約80分の1の大きさです。最近は純利益は出ていません。あまりにも小さく、存在感がありません。しかも利益が出ていないのですから、これまでと決断したのが本音かもしれません。

2018年10月15日